
デジタルソリューションとデータの責任
スタートアップと企業間の成功する協業の形
スタートアップと大企業の協業は、陰と陽のようなものかもしれません。つまり、全く異なるものでありながら、高い補完性があるということです。
大企業にとって、スタートアップは、競争で他社より先行するために必要なイノベーションとソリューションの源となり得ます。一方、大企業は、市場アクセス、事業ネットワーク、研究・調査、専門知識、ブランド力などを提供することで、スタートアップと相互に協力することができます。
ただし、両者の本質的な違いにより、予期される障害が存在します。
企業とスタートアップは仕事のスピードが異なり、その文化が正反対になることもあります。体制やリソースが異なるため、お互いの目標や時間軸を一致させることは、常に念頭に置いておくべき課題です。
コーポレートアクセラレーター
このプロセス合理化のため、多くの企業は、スタートアップ企業が入口として利用できる専門的なアクセラレータープログラムを立ち上げています。
Applico社の Aaron Wiener氏によると、アクセラレーターは、2010年代初頭にMicrosoftがKinect Acceleratorプログラムを立ち上げ、ゲームやモーションセンサー機器向けの新しいアプリや機能開発のため、スタートアップを呼び込もうとしたのが始まりです。
スペインの大手通信会社Telefónica社も、最も早い時期からの先駆的企業の一社とされています。2011年、同社は最新の技術および事業モデルへのアクセスを獲得するため、有能な人材とイノベーションを探す試みを行いました。
「コーポレートアクセラレーターは、大企業とスタートアップの双方に利点のある提案です。企業はアジリティ(機敏性)を高め、スタートアップのエコシステムの最新動向を把握できます。スタートアップは、スポンサー企業との協業に留まるかどうかにかかわらず、自分たちの一連の事業に使える見識を得ることができます」とWiener氏は記しています。
三菱ふそうは、モビリティを中心としたあらゆる分野のアイデアについて、創造力のある外部関係者を招き協働するため、Fuso GreenLabを立ち上げました。三菱ふそうのアクセラレーションプロジェクトへの参加によって、世界市場へのアクセス、専門家による指導、世界クラスの作業空間、テスト施設への扉を開き、長期的な協力関係を築くことを目標としています。
今日のアクセラレーターでは、特定の技術や戦略的イノベーションを中心に何かをデザインするという特定の目的を達成するため、対象を広く取るのが一般的です。
例えば、三菱ふそうはスタートアップのピッチングイベントでかわさき新産業創造センターと連携しています。4月12日、三菱ふそうは、現在進行中のロボットおよび工場自動化プロジェクトの詳細を共有し、革新的なソリューションを持つパートナーを探すためのリバースピッチを開催しました。発表者は、自動プロセスについて、また解決を目指す関連課題について説明を行いました。同イベントの2日目は5月に予定されており、そこでは、スタートアップおよび外部関係者がソリューションのピッチを行うことになっています。
スタートアップが企業について知っておくべきこと
協力をする理由はたくさんあります。アクセラレータープログラムに参加する場合、スタートアップにとって重要なのは、企業が直面するいくつかの動きを事前に理解しておくことです。ここでは、アクセラレーターへの応募前に考慮すべきヒントをいくつか紹介します。
準備は万全に
スタートアップは、自分たちの製品、サービス、技術について、業界特有の価値提案と使用事例を明確にした上で、企業側へ連絡を取る必要があります。また、初対面がうまくいったとしても、企業側パートナーは、その提案を評価し、社内でプロジェクトに対する支持を得るために時間が必要です。ここでは、スタートアップと企業の間のコミュニケーションをオープンに保ち、迅速に提供できる適切な補助資料を用意することが良い戦略となります。順調に進めば、全関係者間での秘密保持契約 (NDA) の締結、さらにはビジネスケースの準備、契約書の作成へと進むことになります。
確かな価値提案を持つ
覚えておきたいのは、大企業があなたの製品を採用する場合、その企業側には多大な献身的関与が求められる可能性があるということです。企業は、スタートアップのスピードに合わせ、より迅速なプロセスを実現しようと努力していますが、一般的に、潜在的な協力関係が大きくなるほど、協力を進める前に必要な承認、デューデリジェンス、コンプライアンスの確認事項が多くなります。とはいえ、アクセラレーターは、パイロットプログラムの実施、契約や調達の簡素化、フィードバックや資源調達の機会の提供によって、プロセスの合理化を図ることを目的とするものです。また、企業は社内で様々なライン機能の問題点を把握し、イノベーションを該当する課題に結びつける作業も行っています。それでも、スタートアップに対するデューデリジェンスは不可欠となります。
New Horizons社は、「スタートアップは、単に “あったらいいな” 程度のものでは、めったに成功しないことを理解する必要がある」と協力に関する報告書の中で述べています。同報告書には、スタートアップ企業向けに「1,111ポイントコンセプト」が記載されています、これは、アイデアで1ポイント、次に詳細なプランで10ポイント、開発するチームで100ポイント、最後に動作するデモンストレーションで1,000ポイントを獲得することができるという概念です。
デモンストレーションを成功させるためには、該当企業とその業界に適用可能なソリューションの使用事例を示す必要があります。また、類似技術が市場に出回っている場合、主要な差別化項目を説明することが不可欠です。
コーポレートアクセラレーターは、組織によって異なります。株式と引き換えにシード資金を提供するものもあれば、メンターシップ、施設、市場アクセス、ブランド力、データやAPIを提供するものもあります。したがって、スタートアップは、プログラム参加前に、企業パートナーによってどのニーズを満たせるかを優先順位付けし、アクセラレーターが目標達成にどう貢献できるかについて明確な視点を持つ必要があります。
三菱ふそうのGreenLabは、個人、スタートアップ企業、その他企業からの革新的なアイデアを常に募集しています。このリンクから、ぜひみなさんのアイデアをお聞かせください。いつでもみなさんのアイデアをお待ちしています!
Other Articles
モビリティの未来に向けて道を築く

目的志向のビジネスは必ずしも慈善行為であるとは限りない

産業界の変わったカップル:異なる業界の組織が手を組んだとき

炭素市場におけるオフセットの種類 : オフセットプログラムを理解するためのガイド
