
デジタルソリューションとデータの責任
産業用ウェアラブルの主な利点と実例
スマートウォッチやフィットネストラッカーを使ったことがあれば、スマートウェアラブルの利点を知っているはずです。スマートウェアラブルはリアルタイムの情報を提供し、装着しやすく、テクノロジーによって生活を便利にします。同様に、産業用ウェアラブルの分野は、新しいダイナミックな技術を製造部門にもたらし、業界関係者が注目しています。
これらの機器は、安全性の向上、身体的に困難な作業の支援、ライブサポートやコミュニケーションによる現場担当者とのつながりをもたらします。
アライド・マーケット・リサーチによると、産業用ウェアラブル市場は、2019年の37億9000万ドルから2027年までに84億ドルに成長すると予想されています。それにしても、同市場の成長を推進するビジネスバリューとはどのようなものでしょうか。
産業用ウェアラブルの4つの利点
1.ウェアラブルによる安全性の向上
産業環境におけるウェアラブル技術の主な利点は、労働者の安全性を高める機能です。現場の産業労働者は、多くの場合、危険な可動機器や重機を扱い、大きな騒音や高温を伴う過酷な環境で作業をします。けがの防止が最優先です。
産業用ウェアラブルを使用すれば、けがの防止の支援や状況認識の向上につながり、安全性が向上します。産業用ウェアラブルは、スマートグラス、センサー付き安全帽、作業者の身体を支えて動作を増強する装置、危険な環境にある作業者を特に監視する装置など、さまざまな形態があります。
実例をいくつか挙げましょう。
カナダの会社Backline Safetyは、危険な状況で単独作業をする労働者を監視するウェアラブル安全装置を開発しました。この装置は、チェックインがないとSOSアラートを発し、直ちに監視スタッフに知らせます。
WakeCapは、位置情報を監視するため、作業現場の周囲に設置されたセンサーと安全帽を接続します。この帽子は頭部への衝撃や作業員の転倒も検知し、緊急時に作業員がパニック警報を発することもできます。
ほかにもKenzenのような会社は、病気予防を目的とした健康管理の装置を提供しています。これらの装置は、電解質ナトリウム、代謝産物、グルコース、さまざまな分子、タンパク質など、ユーザーのバイオマーカーのほか、移動速度、有効心拍数、体温を測定します。
2.人間工学に対応するウェアラブル
ウェアラブルデバイスは、作業の効率化やけがの軽減を目的に普及が進んでいます。なかには、作業者の動作を機敏に増強することで痛みや関節ストレスを軽減し、反復性緊張外傷の予防に役立つものもあります。
例えば、Ironhandは握る力の強化を目的とする強化手袋で、これを着用すれば反復作業の際に大きな力を使わずに済みます。この装置は5本の指すべてに人工腱を備え、バックパックやキャリーケースに装着したパックで動きます。
Herowearは、衣服のようにフィットし、同時に背中の負担を軽減するように設計された男女用バックアシスト・エクソスーツを開発しました。同社によると、この装置は背中の負担を75ポンド軽減します。
他の企業はさらにデータに基づく取り組みを進めています。StrongArm Technologiesは、着用者の身体の動きを監視するウェアラブルシステムを開発しました。このシステムは即時フィードバックを返し、ユーザーに不適切な屈曲やねじれなどの有害な動きを知らせます。ウェアラブルは情報を収集・保存し、評価用の包括的レポートにフィードして、作業者がより良い習慣を身に付けられるようにします。
スマート衣料やアクティビティトラッカーの普及も進んでいます。コネクテッドシューズからアクティブウェア、ビジネススイートまで、あらゆるものがいたるところで出現しています。これらのデバイスの多くは、産業用に特化したものではありませんが、作業環境に適しています。その一例がSensoriaスマートソックスです。このソックスは、着用時に最も圧力を受けている足の部位を検出し、そのデータをスマートフォンアプリに送信します。
コネクト衣料が現場で働く産業労働者の未来にあるのは間違いありません。
3.生産性と効率を高める産業用ウェアラブル
未来の工場とは、未来志向のメーカーが最先端のデジタル技術を駆使してダイナミックで持続可能なプロセスを実現する工場という概念です。コネクテッドワーカーは重要な要素であり、産業用ウェアラブルが重要な役割を担います。
現場担当者の間では、AR(拡張現実)メガネ、スマートウォッチ、スキャナなどの普及が進んでいます。ここでは、メーカーの支持を得ているデバイスを詳しく見てみましょう。
ARメガネ
Googleは2014年、一般向けのARメガネブランドGoogle Glassを開発しました。この製品は一般消費者には不評でしたが、熱心なニッチファンを獲得しました。そのため、Googleや他のメーカーは、市場を変えざるをえませんでした。彼らが注目したのは、受容力がはるかに大きな製造業です。
ARメガネは、作業者が視界に表示される情報や指示にハンズフリーでアクセスできるため、人気が高まっています。これらのデバイスを使用すれば、多くの場合、作業者は動画や写真を撮影し、リアルタイムのリモートアシスタンスを受けることができます。これによって専門家と現場担当者の間で大陸を越えたリモートコミュニケーションが可能になり、サポートの改善に大きな意味を持ちます。
スマートウォッチ
ARメガネとは異なり、スマートウォッチはすでに一般の人気を博し、市場規模を拡大し続けています。2021年の市場規模は304億ドルと推定され、2030年までに8%以上の成長が見込まれています。
企業は、産業界を含むさまざまな市場向けに開発を進めています。Workerbaseは、産業環境専用のスマートウォッチを開発しました。このデバイスは、包括的なロジスティクス、監視制御とデータ取得、サービスとメンテナンス、コミュニケーション、品質管理など、さまざまなアプリケーションに対応しています。
グローブスキャナ
物流施設や倉庫では、従業員は通常、ピストル型グリップのスキャナを持ち歩きます。これらは重くて扱いにくいこともあります。ProGloveは、そのようなスキャナに代わるスマートウェアラブルの選択肢です。手の甲に装着し、親指の近くのセンサーを起動させることで作動します。このデバイスはハンズフリースキャン機能を備え、スキャン1回あたり最大4秒の時短が可能ということです。
4.運用管理
スマートウェアラブルは、職場全体の環境マッピングや追跡など、適用範囲がますます動的になっています。
カナダのメーカーZeroKeyは、環境全体の運用を詳細に可視化するツールを製品ポートフォリオに組み込んでいます。同社のデバイスは、ユーザーのワークフローのすべての動きや相互作用をリアルタイムに追跡するため、3Dミリレベルの位置決め精度を備えています。これには、さまざまなセンサーやウェアラブルによる、作業者、ツール、マシンの追跡機能が含まれます。
これは、ユーザーが施設の柱、天井、壁、その他の静的表面の周囲にアンカーノードを設置することで機能します。そのほか、フォークリフトなどの機械に設置するデバイスや作業者の手首に装着するデバイスもあります。同社のウェブサイトによると、このシステムは「資産、プロセス、商品、人」を記録するため、動きや位置をリアルタイムに追跡します。
Industry 4.0の到来
Industry 4.0は、現代における技術とプロセスの急速な進歩を概念化したものです。相互のつながりとスマートオートメーションの結合がますます進み、世界の産業に根本的な変化をもたらしています。
従業員のために先進的ツールを取り入れることが避けられないのは以前と同じです。産業用ウェアラブルは、現代産業の進化における次のステップにすぎません。それらは最新の技術によって変化し続けます。そして、イノベーションがプロセスと効率を改善するためのソリューションをもたらす限り、ウェアラブルは今後ますます普及するでしょう。
職場でスマートウェアラブルを着用したことはありますか。あるとしたら、どのようなもので、何をしましたか。以下のコメント欄に回答を記入してください。
Other Articles
三菱ふそうのロボット導入による「未来工場」づくり

国内外のEVカーボンクレジット

伝染病時代のロジスティクスとサプライチェーン
